『医療介護費用適性化のための保健事業と介護予防事業の一体的実施』

2024.10.28

国の社会保障費、医療費介護費用の適正化に向けて、令和2年度より「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」という新たな制度が始まった。後期高齢者の医療保険者である後期高齢者医療広域連合と市町村が協力して、後期高齢者の健康維持・フレイル予防に努める新たな仕組みであり、令和6年中には全ての市町村での運用、導入が求められている。制度の趣旨としては、①高齢者の特性にあった保健事業をおこなうこと、②市町村を中心に、地域の関係者が連携体制を作ること、③国保データベース(KDB)システム等を活用し、地域の高齢者の全体像を把握し、必要な人に必要なサービスが行き届くように計画を立てること、④保健事業にとどまらず、社会資源の活用等地域づくりの視点で取り組むこと、⑤振り返り(事業評価)をおこない、地域にあったよりよい方法を工夫していくこととなっている。

これまでの行政は、介護予防をおこなう介護保険担当部局、住民の健康づくりをおこなう保健衛生担当部局、健診をおこなう広域連合が、各々の制度・財源に対応して事業を実施してきており、行政の縦割りシステムの弊害として、それぞれの保有する情報や資源が共有されず、包括的な保健サービスを提供しにくい状況があった。コロナ以前においては、厚生労働省が主導する形で「一般介護予防事業」として、補助金も使って地域の通いの場を全国で数千箇所を設置していたが、参加率も低迷していた。通いの場の再定義も求められる。

今回の「保健事業と介護予防の一体的実施」におけるポイントは明確だ。言うまでもなく介護と医療のデータを連続性の中で一元的に取り扱い、課題の抽出を正確に行っていくこと。結果に繋がっている事業とそうでない事業を評価判断し、過去の慣習やしがらみと決別する勇気をもつこと。短期的に達成可能な指標、中長期的に達成していく指標、KPIを設定して、部局横断型のプロジェクトメンバーでしっかりと振り返りを行っていくこと。民間であれば、当たり前のように行っているこれらの仕事の進め方について、縦割りの組織であると中々調整も難しいかもしれないが、そこは各市町村長がリーダーシップを発揮して旗振りを行っていくか、もしくは議会においてもこういった状況を理解した上で、しっかりと牽制をしていくことが必要だと考える。次の世代のためにも、日本の社会保障費の抑制は待ったなしだ。

アグリマス株式会社
代表取締役・税理士                                               小瀧 歩

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